深夜の古新聞

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zoom RSS 空と風にあこがれて 小川安夫

<<   作成日時 : 2016/06/22 20:37   >>

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放浪詩人が個展


身体障害も苦にせず  −銀座−


 小川さんは群馬県高崎市に生まれた。高校三年のとき谷へ落ちて脊髄を痛め、その後肺もおかされて不具になった。十八歳のある日父ひとりの家から旅に出た。ゴム長ばき、背中にコウモリ傘一本、頭に登山帽を乗せて・・・。
 身障者手帳があるから旅費は五割引。メシと宿は出たとこ勝負。コジキのねぐらにもぐり込んだことも、見知らぬ女の人におごってもらったこともある。京都の一燈園など修養団体の門を叩いたり、禅堂で座ったこともある。
 色紙にフェルトペンと水彩絵の具で山下清ばりの絵を描いて、小さな言葉を添える。
 「ふっと秋風、遠い浮雲、ブツブツいうのはこっちが悪い」
 いつか、こういう作品に打ち込むようになっていた。
画像
 気の向くままにどこにでも腰をおろして、筆をもつと、手が震えだす。全神経で指先をにらみつけて描く。テーマは全て旅のひとこま、ひとこま。何枚かたまると道端に並べて青空即売会をやり、これで足代を稼げるようになった。地方の小都市では、彼の作品に目をとめて、宿を提供してくれる人も多くなった。今では南は与論島、北は礼文島まで、全国至る所にシンパがいる。
 詩を持って押しかけたのが縁で、作家武者小路実篤氏も後援者になってくれた。そのキモ入りで三十九年夏、東京で個展を開いた。
 「身障者にありがちなジメジメしたものを、これっぽちも感じさせない」という評だった。

 三年前から西銀座デパートが個展の会場を無料で提供してくれるようになった。ふらりとやって来ては作品を並べてゆく。気前のいい人が金をくれれば喜んで受け取る。泊めてくれる人があれば遠慮なく世話になる。好意に甘えすぎているかな・・・と、自戒することもある。
 三年前に父親が死んだ。死に目には会えなかった。去年の春、新書判で処女詩集「空と風へのあこがれ」を出版した。北アルプスのふもとを走るローカル線に乗ろうとして、プラットホームから転げ落ち、寝込んだこともある。だが、旅は体を鍛えてくれた。足は踊るようにして一歩、一歩と選ばなくてはならないが、口はかなりきけるようになった。
 旅はいつ終わるのだろう。
 「体がひきしまるほどきびしい、冬の空の下の路頭は更にいいものです」
 最近の詩集で、小川さんはこう歌った。

放浪の画家、俳人「小川安夫」という人

 昭和42年11月9日 朝日新聞

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