殺されたと知り妻は狂乱

他に関係者あるか  生首事件


 既報、内妻の訴へにより謎の生首事件の証人として大崎署に検挙された犯人、市外荏原町製薬会社販売員栗城××につき廿五日も早朝から警視庁捜査員と大崎、杉並両署員が協力し、同人の

自白

に基き、実子○○(五つ)を殺し死骸を埋没したといふ杉並町実兄方の縁の下を捜査したが、胴の部分は発見されないので、警視庁捜査課では廿六日改めて検事、予審判事の出張を求め再検証を行うこととなった。一方犯人を検挙した大崎署では廿五日朝から、子供の生首が発見された現場の所轄杉並署から司法主任以下出張して犯人栗城を長時間取り調べた。

栗城

は死体の所在については首を左右にしてはっきりしたことを言はず、○○を殺害した犯行についても「子供が泣くので口を押へたところ窒息死亡したので、死体の処置に窮し実兄の住居の縁の下に埋めた」と申しているが、当局は最初から殺意をもって計画的にやった犯行と見てゐる。
 廿五日実兄方から栗城の所持品を押収したところ、○○が殺された時身につけてゐた親銘仙の綿入れや羽織、襦袢などが行李の底から現れた。
 なほ同人は時々興奮して「私が捕まれば一家は

全滅

だと口走り「独房に入れてくれ」と当局を手こずらせてゐるので特に警戒してゐるが、係官がなぜ全滅するんだとたづねても言を左右にしてゐるばかりでなく、犯人がこれまで陳述したところと実地検証の結果とはかなりの相違があるので、更に廿六日から厳重な追求をする筈で、当局は他に事件に手を貸したものがあるのではないかと見てゐる。
 また別れた子供のいとしさに仙台からはるばる上京した妻も、わが児が父親の手で殺されたとハッキリ知って

半狂乱

の状態にあるので、万一を気遣ひ上京後の宿を引き払わせ、付近の旅館に保護している。

母に分かれて泣く子を殺す 母の一念から暴露


 実子の○○を殺害するに至った経路につき栗城の自白は以下のとおりである。

 栗城は大正十三年郵便局に勤務中、同僚であった現妻と内縁関係を結び、現妻が妊娠したので郷里の仙台の実家に帰して月十五円から三十円位の仕送りをしてゐたが、同年殺害された○○を分娩した。
 昭和三年四月栗城は実兄を頼って

上京

したが就職口がなくぶらぶらしてゐたので、妻への仕送りも絶え、妻はしばしば手紙を夫の許に送って不実を責めたので「子供を連れてくれば引き取る」と手紙を出し、妻が上京して子供を受け取り、妻は郷里に帰った。
 栗城は子を背負って兄の家に帰る途中、男親になつかぬ○○が火のつくやうに泣き出したので、実兄方付近の空地で○○の口に手を当て殺害し、死体を抱えて裏口から家に帰り兄の目を盗んで六畳間の便所寄りの

床下

に着物をはいで埋めてしまった。
 ところが一ヶ月余経った二月廿六日に犬が死骸の一部を隣家の庭先まで咥へ出し、杉並署の活動となったので、犯行発覚を恐れて三月十二日に実兄の家から目黒に引越し、製薬会社に就職し勤務中、現在の中延の住居に移った。
 妻には引越し先を告げなかったため、妻は夫に子供を引き渡すときに千円の慰謝料をもらふ約束の期限に百方夫を探してゐるうち、製薬会社に勤めていることがわかり、会社で栗城と会ひ

千円

の慰謝料とともに子供の所在を尋ねたところ彼は「満州の友人に預けてある」といひ、なほ追求すると「子供のことには何も聞いてくれるな。お前は俺を殺す気か、俺を助けるつもりなら何も聞いてくれるな」と深刻な表情で妻に哀願するので、生首事件を聞いた時もわが子ではないかと思ひ、大崎署の人事相談係に駆け込み

訴へた

結果、当局の活動となり二年越しの迷宮事件は解決したものである。

東京日日新聞 昭和五年五月二十六日

続報

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