汚物 都市の悩みと対策

行き詰まった処理方法
 厚生省 「清掃法案」を提出へ


 近ごろ都市は汚物の処理に困っている。戦争中、東条内閣は血の一滴と言われたガソリンを特配してまで、東京都の汚物を農村に配ったそうだ。化学肥料の工場が火薬工場などに切り替えられ、肥料が不足したため、農村の要望に応じて、閣議決定としての措置だったが、それから十年、化学肥料の増産に拍車がかけられている現在では、汚物の農村需要が減る一方で、都市は逆にその処理に悲鳴を上げている。街から悪臭が消えないし、付近の海水や河川には大腸菌が増えてきた。大都市だけでなくキャンプ場、海水浴場、観光地も客の集まる時期には毎年のように問題を起こし、時には政治問題にまで発展しているのだが、明治三十年に制定された古めかしい「汚物掃除法」では、どうにも処理しきれない数々の問題も含んでいるようだ。厚生省は次の通常国会には「清掃法案」を提出してこの問題の解決に乗り出すそうだが、立法措置は取れても、乏しい国や地方の財政では、どこまで汚物処理に金がつぎ込まれるか判らない…と暗い表情を見せている。都市の汚物処理がうまくいかない原因は、下水道の完備を望んでもそれが財政の大きな負担となって実現しないところにあるようだ。しかし、だからと言って、不衛生な汚物処理の方法がゆるされていいはずのものではないことは明らかだ。国民のひとりひとりの生活面や衛生面に広く結びついている、最近の汚物処理の実情とその悩みを厚生省に集まった資料を中心に見てみよう。


増える一方で需要激減


 厚生省の統計によると全国民の排泄する汚物の総量は、一年間に約一憶八千万石で、その大半は肥料に利用されている。だから肥料として使用するためには、これを衛生的にどう処理するかがまず問題になるのだが、それはそれとして、近ごろ汚物の農村需要がだんだん減ってきて、都市では汲み取りが円滑に進まないし、市民の不衛生な投棄が各地で見られるようになった。
 またたとえ都市の責任で汲み取っても、その処分に行き詰まってきているので、その対策が緊急問題になっている。
 その原因には、化学肥料の増産に加えて都市の人口が急増し、排せつ量が増えてきたこともあげられる。しかも農村に有畜農業が普及されるにしたがって、積肥の材料には効率が高く扱いが簡単な牛馬の糞尿が用いられるようになり、ますます汚物の農村需要が減っている。
 これらの傾向は年を追って強まっているのだが、地理的条件の悪い都市はさらに汚物処理が難しい。
 例えば、東京都に隣接する武蔵野、浦和の両市や大阪市に近い伊丹、尼崎の両市、北九州の都市の集団地区では農村地帯が相対的に狭くなるわけだし、また秋田、佐賀両市のように、周辺の農村が単作水田地帯では、肥料としての価値が低いために、汚物の利用度がないわけだ。室蘭、函館、神戸、諏訪各市のように、隣接市の乏しい海岸、湖岸の都市も汚物処理に困っている。
 

捨てた海は大腸菌の巣


 汚物の処理方法は都市によってまちまちだが、大体直営または請負によって汲み取っているものが多く、現在百二十都市になっている。下水道を利用する水洗便所が見られるものは、東京都などわずか六都市に過ぎない。それもその都市の一部だ。日光や箱根にみられるように、浄化槽を利用する水洗便所による都市もないではないが、その他は農家の自由汲み取りによっているものが大部分だ。厚生省の調査では、前記の百二十都市のそう排泄量の八八%は農村に肥料として還元され、下水道と浄化槽で処理されるものは七%、海洋投棄など不衛生な処分をしているものは五%となっている。
 ところが最近では、不衛生な処分が各地で増えてきて、問題を起こしているわけだ。
 例えば河川の汚染度にしても、水一〇〇cc中の大腸菌の数は、松島湾二三〇、塩竈海岸一八〇〇、九州の大野川が二〇〇〇から四〇〇〇となっている。今年の夏鎌倉海岸でも大腸菌群が多数発見されたのも記憶に新しい。
 貝類の汚染は広島湾のカキむき身で一〇〇%、殻つきでも八〇%、羽田海岸のアサリは殻つきで一〇〇%、有明海の貝類は殻つきで九〇%に大腸菌が見られるほどの状態だという。
 また、都市が汚物を海に捨てるため、魚網が損耗し、ノリ、魚類の収穫高が減って、漁民と市側との間に紛争が絶えないところが増えてきた。
 

空地や川から井戸水へ


 海のないところでは汚物を空地、草地、河川などに捨てるとか、貯留槽で処理しているのだが、貯留槽から汚物があふれて、付近の井戸水が汚染されることも多く、札幌市のように市費で補償した例もあれば、佐賀市のように貯留槽から汚物が地下にしみて付近の井戸に入り、問題を起こしたところもある。
 こうしていたるところ汚物で汚染されているために、赤痢などの伝染病が全国的に発生しているし、寄生虫病も広がっている。農村は言うまでもなく、都市でさえも母乳以外口にしない乳児が、寄生虫に侵されている事実は、我々の生活環境が汚物のために相当汚染されていることを物語っている。
 

観光客も臭いで逃げ出す


 汚物の不衛生な処分は衛生面だけでなく、観光事業にも多くの問題を投げている。
 街や家の悪臭は早くから外人が閉口しているところだし、原始的な汚物の運搬方法にあきれている。松島では昨年アメリカの婦人観光客が、道端の汚物を踏んで転び、それからというものこれがアメリカで批判となって、松島に立ち寄る外人が激減したと報告されているし、瀬戸内国立公園では沿岸の各市の汚物が農村から締め出され、海に捨てるより方法がないところまで追い込まれて、厚生省を悩ませている。
 

手を抜く請負清掃制度


 いずれにしても各都市の清掃担当課長は各方面からの風当たりが強く、なり手が少なく、また長続きのしないものが多いそうだ。市役所へ寄せられる市民の投書や不平不満の声の中で、清掃に関するものが多くなってきているのは事実だし、その原因の一つに請負制度の欠点があげられている。
 この制度は業者が手を抜いて不衛生な処分が行われがちだし、監督も行き届かない。また料理屋などの有利な便所だけを汲み取って、一般家庭などの不利なところは後回しになるようだ。汲み取りに不便な地区では不当なチップを要求するところも多い。
 しかも大阪市のように請負を直営に切り替えても、業者に政治的なヒモがついていて、市当局も手の下しようがない場合も多いようだ。
 厚生省の計算によると、同市の場合、汲み取りの七九%は請負で、二十六業者が取り扱い、市が支給する月額四千三百万円が一応業者の懐に入る勘定になる。

朝日新聞 昭和二十八年十一月十二日



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