寄生虫 予防運動今日始まる

心臓病さえ起こす
 農村には深刻な影響


 九州では、ちょっとしたショックで死んだ子供のはらを解剖したら、回虫だらけで七百二十一匹も出てきたという例もありました。
 農村では依然として”農村病”のトップ。
 回虫のため、絶えず胃腸をこわしている農婦、十二指腸虫のために貧血して、農具も取れない主人など、農村にとっては目に見えない”社会現象”となっています。
 また野菜など農村から運ばれるものが多いだけに、都市でもゆるがせに出来ない問題と言われています。
 厚生省では戦後初の”寄生虫予防運動週間”を定め、今日十六日から各地で巡回検診、街頭検診などが行われていますが、最近の感染状況や駆虫の方法を東京寄生虫予防協会に聞きました。

◇下水や水洗便所の多い東京でも平均十人に三人の割で虫を持っています。
 しかし、同じ東京でも中央区、千代田区など一番少なく、大田、練馬など田畑や干潟の多いところは五割の感染率。サラリーマンより外で働く工員、土建労働者などに多い。
 まして一日の大半を野良で働く農村では八割、九割というところがザラだということです。
 弘前市に住むある医者が農村へ往診すること二百回(七カ月間)のうち、腹痛で医者を呼んだ家庭が六十四回。その腹痛の大半は回虫が原因で、同村の寄生虫感染率は七九%であったと最近報告されています。
 そのほか近ごろ多くなってきた心臓病も原因を調べてみれば案外”寄生虫のしわざ”だったという例もあるようです。

◇都会、農村を問わず回虫は子供に、また大人は十二指腸虫が多い。しかも回虫にしろ十二指腸虫にしろ、飲んだ卵や皮膚から入った幼虫が、今頃の時期は成虫となって、さかんに卵を腹の中で生み落しているところ。
 八月から九月にかけて野菜の出回る時に持ってきて風や雨が多く、回虫の卵は風や雨や野菜に運ばれて口の中へ入り、やがて体内で五十日から六十日たつと成虫にかわってゆく。
 その成虫は一匹で一日に二十万から四十万個の卵を産むそうです。そしてその卵が盛んに体外に排出されるのが今です。
 また九、十月の農繁期に皮膚から体内に入った十二指腸虫の幼虫も六週間から十週間で成虫になっている。
 それがやがてメマイ、貧血、胃腸障害を起こし、農耕や家事をできなくしてしまう。

◇ところが、これから寒さに向かう時期は、一面、駆虫シーズンともなっています。
 寒さに対して寄生虫は弱く、外部の回虫の卵も育たないし、十二指腸虫の幼虫も死んでしまう。
 そこで体内の寄生虫を表に出してしまえば、寒い間は感染率もぐっと下がってゆく。
 つまりいくら回虫や十二指腸虫が卵を産んでも、卵が一度表の空気に触れない限りは、感染卵とならないからです。

◇寄生虫を防ぐにはまず
①野菜をよく洗い、勢いの強い水に打たせる。
②部屋をよく掃除すると同時に、手を洗うことが大事。
③公衆浴場などへ行った場合は入浴前後によく体を洗うこと。

 このほど発表された第二十二回日本寄生虫学会の報告によれば、熊本医大が県下の公衆浴場について調査した結果、どこの浴場の風呂オケの中にも寄生虫卵が浮いており、そのうちで回虫卵が一番多かったことがわかりました。
 女湯には、子供の肛門に出てくるギョウ虫の卵が多く、その卵は成熟した感染卵であったと報告されています。

◇直接に駆除する方法は、まず医者や保健所で検便してもらい、体内にどんな寄生虫がはびこっているかを確かめること。
 検便の結果
①回虫卵が発見されれば駆虫剤を飲む。駆虫剤はサントニンと仁草剤の併用が一番効果があるとされています。
②十二指腸虫はこれらの方法では絶対に落ちない。かなり激しい薬を用いなければならないので、シロウト療法は危険。普通は一、二週間入院しますが、最近は勤務とか入院費用の関係を考えて、”一日入院”が御粉wれています。これは医者と日時を合わせて”一日入院”を二、三回繰り返して駆除する方法。
③ギョウ虫に対してはパンツを毎日交換し、熱湯をかけて殺卵するほか、三〇〇から一〇〇〇ccのせっけん液を体温ぐらいに暖めて浣腸する方法や、ギョウ虫薬の服用及び座薬を用いる方法もある。

朝日新聞 昭和二十八年十一月十六日



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