日本一の発電所に文部省が横槍

”尾瀬沼の天然記念物指定”
 東電この所大狼狽


 奥日光の景勝地 - 尾瀬ヶ原と尾瀬沼の大盆地を利用して日本における最大の水力発電所建設を計画した東電では、すでに同地における水利使用権を獲得し、内務、逓信両省に工事認可を申請、認可を待って大工事に着手しようと待機してゐる矢先、最近に至り尾瀬沼及び尾瀬ヶ原には同地独特の湿原植物が多数にあることから、文部省はこの湿原植物を天然記念物に指定することに内定した。
 ところがこの湿原植物が天然記念物に指定されると、大発電所建設に大支障をきたすので、この突然の横やりに東電では少なからず狼狽し、極力陳情を試みているが、文部省の天然記念物指定と東電の水力発電計画がどう落ち着くか頗る注目されている。

出力四十万キロ
 既に用地二万五千町買収
  この決着どうなる?


 東電の水力発電所建設は、盆地になってゐる尾瀬ヶ原と尾瀬沼に自然水を貯へて大貯蓄池とし、尾瀬ヶ原に高さ二百三十尺の

堰堤を築造し

堰堤から隧道によって利根川に水を流すことにし、二カ所に発電所を建設することになってゐる。(他一カ所は国立公園関係で中止)
 この二カ所の発電所の出力は合わせて二十万キロワットで、ここに工事するために下流の地点で増加する出力を合わせれば、実に四十万キロワットととなり、東電現在の総出力九十万キロワットの約半数に達する大規模のものである。

 ところが、尾瀬ヶ原と尾瀬沼には他の土地に見られぬタヌキモ、ゼニゴケその他の植物学上貴重な湿原植物があるので、これは是非共保存せねばならぬと文部省が天然記念物に指定することに内定したわけだが、これが天然記念物に指定されると植物に手を付けることが出来ず、従って発電工事が出来なくなるので大騒ぎとなったわけである。

 しかし東電はこの発電計画の実施に備へるために同地方を二万五千町歩にわたって買収し、大正十一年に内務、逓信両省から水利便用許可を得てゐるので、この計画が駄目になれば今までに要した

総経費を賠償

してもらひたいと内務、逓信両省に抗議しながら、文部省への緩和斡旋を婉曲に陳情してゐるが、文部省が天然記念物の指定をなす限り、東電の発電計画は支障をきたすところから文部省がどこまで強く出るか興味ある問題である。

双方の意向は


指定の範囲は研究中


 文部省宗教局では語る
 尾瀬ヶ原と尾瀬沼の湿原植物については天然記念物の指定をなすことに大体決定し、目下研究手続中である。
 東電の発電計画に対してはなるべく打撃を与へぬ様にし、双方で譲歩したいと思ってゐるが、湿原植物を他に移植するといふ様なことは出来ぬ。どの範囲の指定をし、保存するようにするかはまだわからぬ。

現在指定だと大打撃


 東電では発電計画について語る。 
 どうも天然記念物の指定問題には困ってゐる。
 湿原植物の保存が必要であれば、あの付近には広い土地を持ってゐるので移植してやっても良いと思ふのだが、現在指定をやられては打撃である。
 だから内務逓信両省に対して極力陳情し、斡旋方を頼んでゐる。

東京朝日新聞 昭和十九年九月十二日

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