商魂に殺されるクマ 郡山でアイヌ祭り
デパートで厄介払い
三年も子供の相手させて
十五、十六日の両日、郡山二中体育館で行われる「アイヌのクマ祭」に、同市郡山デパート屋上で三年間市民に親しまれた二頭のクマが殺されることになった。この催しは郡山商工会議所とアイヌ無形文化財保存協会の共催で、県教委、郡山市教委も後援しているが、「動物愛護の精神に反する」との声が高まっている。
またクマを提供する郡山デパートでは、「千円の買い物ごとにクマ祭招待券を出し、祭りのあと酒二合とクマ肉を食べさせる」という触れこみで、大売り出しをやっており、この商業主義も批判されている。
殺されるクマは、それとは知らず毎日愛嬌を振りまいている百助と花子の二頭。どちらも吾妻山産のツキノワグマで、まだ小熊だった三年前、同デパートが猟師から買い、以来子供達のよいお相手になっていた。
ところが四歳になったこのごろは体長も一メートル、重さは二、三十貫になって、今までのオリでは間に合わず、エサなど月二万円もかかるので、同デパートでも頭を痛めていたらしい。そこへ北海道旭川市のアイヌ無形文化財保存協会が、観光宣伝をかねて全国を巡業しているクマ祭が登場した。
同デパートの会長で郡山商工会議所会頭の星勇氏が「これは名案」と飛びつき、さっそく一行を郡山に招いたわけ。
計画によると、一行はアイヌ十三人と祭用にならしたクマ一頭で、一日三回アイヌの歌や踊りとクマ祭の模様を実演する。このクマはもちろん殺さず、代わりに郡山デパートが百助、花子の二頭を提供し、お客を招待して翌日クマ肉をごちそうする仕組み。だが、観衆の目の前で殺すのはどうかというので、前もって殺しておき、当日は死体を会場に飾るだけという。
クマ祭の入場料は大人百円、高校生以下は半額。その利益は郡山図書館と東京の県学生寮の建設資金に充てるという名目。「社会科の勉強になる」と郡山市教委も後援に乗り出したため、市内中学校から、すでに大量の団体申し込みが来ている。
”殺さないで”非難集まる
郡山市主婦宮沢さんの話
人間が住みにくい世の中にクマなど・・・という人があるが、動物が住みよい国になってこそ、人間も住みよくなると思います。デパートではまた子熊を買うそうですが、それが大きくなったらまた殺すつもりでしょうか。
星勇郡山商工会議所会頭の話
大きくなって手のつけようがないので、殺すことに決めた。子供たちのためにはまた子グマを買うつもりだから、文句はない
もってのほか
旭川市教委や道教委上川事務局などでは次のように語っている。
クマ祭は信仰を持って生まれ、神聖なものとされているが、それを離れて何の味わいもない見世物にされるのは、本来の精神を紹介するものではないし、正しい姿をこわすものだ。デパートのお客にクマの肉をサービスするに至ってはもってのほかだ。
昭和31年2月11日 朝日新聞
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