ビデオテープ 米国テレビ界の話題

取扱い、すごく便利
 将来、映画界にも革命?


 最近アメリカのテレビ界では”ビデオテープ”の実用化が大きな話題になっている。詳しく言えば”ビデオ・テープ・レコーダー”または”テープ録画機”といったもの。戦後磁気テープの発達によって録音技術は画期的に進歩したが、今度は映像を収めようというのだから、磁気テープの利用はさらに飛躍的な段階に入ったといえる。では磁気テープはどのように発達してきたか、そしてそれがテレビ界にもたらす革命的意義を探ってみよう。

 磁気録音の着想はかなり古く、エジソンの蓄音機発想の約十年後の一八八八年に既にスミスという人がこの考えを発表している。これとは別にデンマークのハウルゼンが銅の針金に磁気的に録音することを思いつき、この機械を”テレグラフォン”と名付けて一九〇〇年パリの博覧会に出品した。
 一九〇七年に彼はさらに直流バイアス法という録音の新方式を発明し、磁気録音は新しい発展段階へ進んだ。しかし、現在各国の磁気録音が使っている”交流バイアス法”は世界に先んじてわが国で一九〇四年に東北大学の永井健三教授らの手によって完成されたものである。

 これらはみな針金を使う方法だったが、一九二九年には銅のテープを使う方法も発明されており、一九二九年には銅のテープを使う方法も発明されており、一九〇三年にはこの方式によってBBC(英国放送協会)から初めて放送が行われた。この年にフロイマー博士が紙またはプラスチックの表面に鉄の微粉を塗って録音体を作る方法を発表した。一方、アメリカでは針金による方法が発展して、これも軍用に多く使われた。戦後、ドイツから磁気録音の知識を得たアメリカでは急速に発達、テープレコーダーの爆発的普及が始まった。

 わが国でも戦後の視聴覚教育の採用とともに、まず学校関係に用いられ、やがて民間放送の出現はテープレコーダーによってはじめて可能になったといわれるほどの役割を放送において占めるようになった。とくに”デンスケ”と呼ばれる携帯用録音機はわが国独特のもので、サンフランシスコ平和会議の時、ソ連代表グロムイコ氏の”ノーコメント”という声をテープに収めたことから国際的な人気を上げ、アメリカにも輸出されるようになった。

 テープ録音の次の発達段階は立体録音。これは音に方向感を与えるために二個のマイクからの音を別々に一本のテープに録音するもので、NHKで第一、第二両放送を使って放送している立体音楽堂の時間にもしばしば用いられている。

 こうした磁気テープの利用をケタはずれに発達させたのが今度のビデオテープ。まずこれに手を付けたのがピンク・クロスビー研究所で、一九四九年ごろ研究を始めてからすでに二〇〇〇万ドルを使ったといわれ、かなりの成果を収めているようだが、まだ完成にはいたっていない。次に手を付けたRCAでは、一九五三年にはすでにプリンストンからニューヨークまでのテープによる録画の放送実験を行ったが、さらに今年の三月、CCIR(国際通信諮問委員会)のカラーテレビ方式打合会がニューヨークで開かれた時、カラーテレビ用のビデオテープを発表した。これに出席したNHK技研テレビ研究部鈴木副部長や偶然これに立ち会ったテレビ映画部飯田部長、同芸能部佐々木副部長らの話では「まだいくらか難点はあるが、実用段階の一歩手前だ」という。さらに四月十四日シカゴで開かれたラジオ・テレビ博覧会でアンペックス社が突如白黒ビデオテープの完成発売を発表して話題をさらった。現在の値段は一台七万五千ドル。わが国でも今年末発足予定の大阪テレビがこの購入を決めた。

 ビデオテープの基本原理は録音の場合と同じだが、周波数が音では約十キロサイクルなのに、テレビの像では数メガサイクルだからテープの速度を数百倍にしなければならない。しかしこれは不可能だからこの速度をもっと小さくして済ませる方法を考える必要がある。そのために一本のテープに何本かに分けて入れるようにすることを考え、周波数分割法、時分割法などがそれぞれ採用されているが、それでも毎秒二〇~三〇フィートの速さになる。ところが今度のアンペックスのは走査法を採用して二インチ幅のテープに横に走査線状に記録するから、テープ自体の動きは毎秒十五インチでよい。従って直径十四インチの巻テープに一時間のプロを収められるから取扱いには極めて便利なのが特徴といえる。

 いずれにせよビデオテープによる録画はフィルムと違って現像の必要がなく、しかも何回でも使える便があり、更に技術的に完成すれば、フィルムよりも鮮明な画像が得られるはずだから用途は次第に広がりそうだ。ことにカラーではこれに頼らざるを得なくなるし、更には映画の世界でもフィルムにとって代わるだろうと見越している人もある。

朝日新聞 昭和三一年七月一五日

 

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