チフス菌菓子で3家族皆殺しの陰謀
10数名発病3名死亡
耳鼻咽喉科医師高橋貞三郎(36)は、培養チフス菌を混入した菓子を実家で病気療養中の妻に勧め、保険金詐欺を企てた。さらに、発覚を恐れて、同女の診断に当たった内科医の一家に同様の手段で魔の手を伸ばし、一家皆殺しを狙って二人の人命を奪った。
埼玉県警川口署は高橋の取り調べを進めたところ、さらなる犯行が発覚。川口市の耳鼻咽喉科医師宅にチフス菌入り菓子を送り、同家の看護婦、女中、留守番3名が昨年6月に同時発病し、女中が死亡していた。さらに、昨年3月頃に同市医師宅に「近所で開業したからよろしく」とカステラを送り、これを食べた医師の子供4人が発病したが、命を取り留めたことが発覚した。
発端は妻の毒殺計画
発覚の端緒は、妻の診断に当たった内科医での相次ぐ死の原因に疑いがかかったのと、高橋が妻の全快後、自宅に入れず、実家に帰らせて離縁状を郵送し、そのことで慰謝料請求の訴訟を起こされたことを怪しまれて、警察の調べに至ったものである。
高橋が犯行に培養チフスを使ったことは、菓子の残りを県衛生課と衛生試験所で分析した結果からだった。高橋は千葉医大を卒業したが、医大時代は「赤」にも関係したこともある男である。
昭和12年5月21日 東京朝日新聞
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